ELR2017名古屋では、3学会(日本緑化工学会・日本景観生態学会・応用生態工学会)に所属する会員から,14の研究集会が企画されました。研究集会は所属学会によらず自由に参加できます。
※ 日本緑化工学会の研究部会が企画・主催した研究集会はそれぞれの研究部会のサイトにも内容を掲載しています。
企画: 応用生態工学会 石山信雄,末吉正尚,森照貴
日程: 9月22日(金) 15:00〜17:00
会場: レクチャーホール
コメンテーター:白川直樹(筑波大学), 三宅洋(愛媛大学)
これまで,ダムは人間生活の安全性や豊かさの向上に大きな役割を果たしてきた。その一方で懸念されてきたのが,河川環境の質の低下である。河川法改正から20年が経過し,流域環境の保全の重要性が広く認識されるようになった今,今後はますます「人間生活と生態系保全の調和を目指したダム管理」が必要不可欠となってくるだろう。また,今後のわが国の課題として忘れてはならないのが,「人口減少」と「社会資本の老朽化」である。日本社会がこれまでとは異なるフェーズへ移行していく中で,どのようなダム管理が考えられるだろうか? 本集会ではまず,全国スケールで蓄積されてきた河川環境の基盤データを活用し,ダムの河川生態系へのインパクトについて整理を行う。さらに後半では,自然再生に焦点を当て,ダムを対象とした河川再生の先進的な事例や,今後必要性が予想される管理上の視点について紹介する。
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企画: 日本景観生態学会 中田康隆
日程: 9月22日(金) 15:00〜17:00
会場: 講義室1
我が国で海岸砂丘植物の生態学的研究が始まり100年が経過した。多くの生態学者がこの特異的な環境に生育する海岸砂丘植物の研究を行ってきた。また,現在までに沿岸部の環境は劇的に改変されてきた。それに伴い,海岸砂丘植生・生態系の保全や再生に係る研究が行われるようになった。さらに東日本大震災の復旧・復興工事の進展に伴って海岸砂丘生態系の保全と再生が大きな課題として浮かび上がってきている。当地域に限らず,海岸砂丘は我が国でもっとも危機に瀕した生態系でありその保全と再生は急務である。本研究集会では日本の海岸砂丘生態系及び植生の現状と課題をこれまでの研究をもとに総括し,生物多様性保全,防災・減災,レクリエーション利用など多様な機能をもつ海岸砂丘をグリーンインフラストラクチャーの1つとしてとらえた上で,その保全・再生・利用のあり方を検討する。
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国土交通省が定める河川砂防技術基準(調査編)の環境分野の記載が最新の学術的・技術的水準および現場実務での活用実態・実績を踏まえたうえで,必要かつ十分なレベルで適宜改定されるよう,国土技術政策総合研究所(国総研)と土木学会水工学委員会環境水理部会,応用生態工学会は平成26年9月より定期的に意見交換会を開催しています。この度,第6回河川砂防技術基準(調査編)をもとにした意見交換会を実施するものです。
※傍聴について:傍聴希望者は傍聴可能です。ただし,傍聴者のご発言は出来ません。
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れまでの研究成果が応用されて礫河原再生事業が進められています。しかし,樹林や草原になった河原を礫河原に戻すことには反対もあります。さらに,現在の礫の供給との関係で,どれだけの礫河原が維持できるのか,その配置をどのようにしたらよいかには知見がありません。そこで,砂防学,土木工学,保全生態学,陸水学,環境教育学,緑化学の研究者が共同して取り組むことにしました。その,問題意識とスタートに近い時点での成果を共有すべくシンポジウムを企画いたしました。
プログラム:
倉本宣(明治大学) 礫河原の潜在的規模と配置研究の意義と課題
奥田晃久(国土交通省河川環境課)礫河原に対する考え方と課題
五味高志(東京農工大学) 礫供給は減少しているのか
知花武佳(東京大学) 礫河原はどこまでコントロールできるのか
岡田久子(明治大学) 礫河原とワンドの空間的分布
金子弥生(東京農工大学) 礫河原のアンチテーゼとしての樹林地・草地
伊東静一(明治大学) 河川敷の自然についての合意形成は可能か
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河川汽水域は,特有の生物が生息し,貴重種も多い特殊な生態系である.しかしながら,人為的環境改変が,生態系や生物多様性に負のインパクトを与え続けているため,それらの軽減ならびに自然再生が緊急の課題である.一方,河川汽水域における自然再生は事例自体が少ないため,有効な技術的手法が体系化されていないのが現状である.本集会では,河川汽水域における自然再生の事例として,徳島県那賀川河口部における地震・津波対策に伴う堤防かさ上げ工事の代償としての干潟が創出された経緯(阿南高専大田直友)および代償干潟におけるハゼ類・カニ類相の変遷(九州大学小山彰彦),宮崎県北川の人工ワンドや,福岡県遠賀川の多自然魚道,熊本県球磨川のヨシ原造成等の九州における複数の自然再生事例(九州大学鬼倉徳雄)を紹介する.さらに,河川管理者視点から(中部地整 日高初淑)と,研究者視点から(徳島大学河口洋一)のコメントを加え,今後の河川汽水域における環境保全ならびに自然再生のあり方について議論していきたい.
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日本は人口減少時代に突入し,従来,技術者や研究者,管理者が実施してきた生態系の監視や管理の分野でも労働力不足が懸念されるようになった。そうした労働力不足を補うものとして,ロボットやUAV(ドローン),AI(人工知能),画像解析,通信技術などの最新技術の利活用に期待が寄せられているが,機器の導入・維持コスト,扱い難さ,野生生物への影響など克服すべき様々な課題がある。その問題を克服するために,平成28年度より環境研究総合推進費(課題名:フィールド調査とロボット・センサ・通信技術をシームレスに連結する水域生態系モニタリングシステムの開発)を受けて,生態系の効率的な管理や監視の実現を目的として最新技術を用いた管理法,監視法の開発を進めている。この集会では,@ロボットボートによる過度に増加した水生植物の除伐,AUAV・カメラを用いた水鳥の監視とディープラーニングや画像処理を用いた生物検出とカウント,BUAV接近による水鳥への影響評価,Cネットワークカメラを用いた水鳥の遠隔監視等の技術開発に関する話題提供を行い,生態系保全や管理の現場での最新技術の利活用,その実現可能性について,現場調査者や管理者の方々と意見交換を行いたい。
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シカ生息域において実施された斜面緑化施工地のシカ採食被害が増加している。採食被害は,緑化植物の採食に伴う植生の衰退・裸地化だけでなく,踏み荒らしによる侵食の発生,侵食に伴う排水路の閉塞,地質によっては落石の発生など,斜面保護機能自体にも大きな影響を与える。斜面緑化施工地におけるシカの採食被害について,
@斜面緑化におけるシカ被害の現状と課題(SPTEC・YAMADA 山田 守)
A斜面におけるシカ被害対策工の種類や特徴(日本植生株式会社 中村 剛)
Bシカの不嗜好性植物を用いた斜面緑化対策(紅大貿易株式会社 吉原 敬嗣)
の3つの話題提供を基に議論を行う。
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日本の河川・ダムでは、管理者が流量や水位、水温・水質、生物相(河川水辺の国勢調査)などのデータを継続的に取得している。データを集約・整理することで、個人の取得のみでは成し得ない大規模・長期の解析が可能になる。データはWEB上から取得できるものもある一方、まとまった形になっていないものや公開されていないものも多い。また、環境DNAなど新たに開発された手法の大規模なデータ蓄積に対する期待も大きい。この研究集会では、河川やダムを対象に、全国的なマクロ解析に利用可能な情報のデータベース化の実態や課題について、データ取得者である管理者を交えて議論したい。
話題提供(仮題):河川・ダムのデータベースの実態(鈴木透・酪農大)、流木のデータベース構築と活用(徐正一・韓国)、河川水辺の国勢調査の活用と提案(森照貴、共生センター)、環境DNAの河川生物情報への貢献(源利文、神戸大学) コメント(国土交通省・予定) 議論(コーディネータ・中村太士)
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気候変動・地球温暖化に対する適応の第一歩は、生態系レジリエンスの定量化と増強である。集中豪雨による山腹崩壊と土石流の発生、農地や都市での洪水、大型台風による森林の倒壊、高潮や海岸浸食。これらの現象はすでに近年、激化の様相を見せており、将来、さらなる規模や頻度の増大が懸念されている。果たして、地球上の生態系はこのような自然かく乱に対してどの程度、回復力(レジリエンス)を持っているのだろうか。元来、自然かく乱は生態系の健全性を高め、レジリエンスを維持する役目も果たしてきた。しかし、人為改変された生態系についてはどうだろうか。激化する自然かく乱に備え、生態系レジリエンスを増強するにはどのような方法があるだろうか。この研究集会では、人為改変された多様な生態系における、自然かく乱に対する生態系レジリエンスを生き物の視点から紹介し、生態系レジリエンスを増強する方策について議論する。
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2014年9月に御嶽山噴火による被害を受けた長野県王滝村は,1984年9月には,直下型の長野県西部地震に伴う大規模な山体崩壊(御嶽崩れ,約3600万m3もの土砂が流出)にも見舞われている。御嶽山南東斜面は,木曽川の一大支川・王滝川の集水域に位置づけられるが,こうした自然災害による影響に加え,戦前から戦中,戦後にかけては発電やかんがいを目的とする大規模な水資源開発が行われ,崩壊域では現在も治山・砂防事業が進められている。本集会では,主に応用生態工学会に所属するメンバーから,ヤマトイワナの「聖地」としても名高い王滝川水系の水環境の現状について,崩壊や噴火の影響とその回復過程,さらには,水資源開発による影響という観点から報告したうえで,火山地域における「自然共生」のために,ELRというコンソーシアムの枠組みでできることを論じたい。
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環境省の自然公園における法面緑化指針が示されるなど,地域性種苗の活用機運は拡大してきていると言える。しかし,実際に「地域性」の定義がはっきり決まっているわけではなく,取り扱いについても発注者や事業者がそれぞれ検討・確認するにとどまっているのが現状である。今後取り扱い方法を改善していくため,最新の研究内容を紹介し,現状と今後の方向性について以下の話題提供を中心に議論したい。
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国土交通省が掲げているグリーンインフラの目的には「安全・安心で持続可能な国土」「国土の適切な管理」「生活の質の向上」「人口減少・高齢化に対応した持続可能な社会の形成」が挙げられており,それに寄与する自然の機能として「良好な景観形成」「生物の生息・生育の場の提供」「浸水対策(浸透等)」「延焼防止」「外力減衰,緩衝」「地球温暖化緩和」「ヒートアイランド対策」に加え,「健康,レクレーション等文化提供」が挙げられています。歴史的に見ても都市公園は,地域住民の健康いわゆる「公衆衛生」を目的に整備された経緯があります。これまでにも各学会において,グリーンインフラに関する議論が行われておりますが,この「公衆衛生」の視点からみたグリーンインフラに関する話題は少ないと思われます。そこで本研究集会では,公衆衛生という観点から,今後のグリーンインフラについて,議論できればと考えています。
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ここ数年,河川や水路,湖沼,海洋等の水域においてすくった水に含まれているDNAを分析し,ある特定の生物種やそこにいる多種について生息状況を推定する方法が注目を浴びている。この方法は環境DNA分析と呼ばれ,生体から放出され,水に漂っている代謝物や糞等に由来する微量のDNAを検出している。現場では水をくむだけでよく,低コストでありながらも,分析精度が高いことが大きな利点である。しかしながら,実用に至るまでにはまだいくつかの課題も残され,環境DNA分析はまさに時の研究テーマとなっている。 このような状況のもと,応用生態工学でも環境DNA分析は現行の個体採捕を代替または補完するモニタリング手法として,生物種や生態系の保全に向けた応用研究に適用可能である。本研究集会では環境DNA分析の特徴や具体的な方法を解説しながら,最前線にいる研究者から最新の話題を提供してもらい,今後の当該分野における期待や展開等について討論したい。
趣旨説明 小出水規行(農研機構・農工研)
2.環境DNA分析の解説 土居秀幸(兵庫県立大)
3.話題提供
1)ため池における外来種などの環境DNAによる検出 相馬理央(兵庫県立大)
2)環境DNAの野外適用範囲を広げる:渓流域,湿地への応用 片野 泉(奈良女子大)
3)環境DNAを用いた河川生物モニタリングの実用化に向けて 赤松良久(山口大)
4)河川水中の環境DNAメタバーコーディングを利用した流域内の水生昆虫多様性調査 八重樫咲子(山梨大)・渡辺幸三(愛媛大)
4.総合討論
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・内容:水田とその周辺の農業水路やため池などから成る水田水域は,近代まで生物多様性の高い空間であった.しかし,全国的な傾向として,戦後の強毒性農薬の使用や1960年代から本格化した圃場整備事業による水域の連続性消失,中山間部での耕作放棄の進行等により,水田水域における生物多様性は大幅に低下した.そうした中,減・無農薬栽培や湿田および未整備の水田の特性を生かした工法と農法の導入など,1990年代頃から水田の生物多様性保全に着目した様々な取り組みが各地で実施され,その効果が期待されている.大型の保全対象種に焦点を当てた昨年度の集会に引き続き,今年度の集会では,農業水路やビオトープ,承水路といった生物の「生息場」に着目し,保全に向けた取り組み事例とこれらに対する定量的評価の結果を紹介する.そして,水田水域における生物の保全を将来的にどのような手段で進めていくべきか議論する.
趣旨説明 田和康太
話題提供
@水田水域における野外コウノトリの食性を安定同位体比から探る(仮題)・・・佐川志朗
A水田ビオトープとマルチトープの造成による水生動物群集の保全(仮題)・・・田和康太
B水田水路網における魚類の移動について(仮題)・・・関島恒夫(新潟大学)
Cほ場整備後の水田域におけるカエル類の生息場の保全について(仮題)・・・渡部恵司(農研機構)
・総合討論 司会・・・河口洋一
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